菫太郎センセイからの、最後のFAX送信を待つ間にあった、LINEの着信。
スマホの表示を一瞥すると、いよいよ送られてきた、センセイからの原稿に、意識を向け、結局、LINEの返信は、後回しになりました。
「深刻な内容じゃなくてよかった」
と翌日、対面したタイミングで、内心を伝えたからには、こちらも、許容オーバであったのかもしれません。
「深刻な内容」だったら、会うまでの時間、それを抱えていられる、自信がなかったから。
とはいえ、炎天の下(もと)に出て行くくらいな許容はあって、会うなりお互いがいちげんさんになる、「スーローフアン」という名のお店で、「牛肉のヨウポー麺」をいただき、GWに会って以来の邂逅を、横並びのスツールで叙すと、そのときにした話の続きをするかの気安さで、酷暑の三時間は、またたく間に過ぎていきました。
「フランク・ロイド、なんだっけ?」
「ああ、ライト」
「それの弟子が建てたのがあの講堂ね」
と、カフェする名目で向かった、「自由学園明日館」を観覧したあとでの知識とおぼしい返答に、これも、GWの散歩の途上で出くわした、「御幸」との文字に、
「明治天皇御幸、何て読むの?」
と伝えたことなどを思い出しました。
ようするに、ひとに恃(たの)む素直さが、その誘いに応えようと、こうして、対面し、
「深刻な話じゃなくてよかった」
などとの内心を伝えさせるにいたるのです。
とはいえ、東京のなかの異国ともいえるお店でのランチから、これも、都心にありながら、設計者、フランク・ロイド・ライトの魂、ないしは、それに共感した者たちとの、自然な語らいを可能にする空間での、内省の旅は、こちらの都合とはいえ、短くも濃い逗留であり、炎天下ゆえの静けさに満ちた、夏のひとときでもありました。