逍遥

渋谷や原宿の喧騒を逃れて、青山や麻布、はたまた、代官山辺りで遊んでいた、青壮年時代。

いわゆる、高級な街で遊ぶ感覚は、そうした、スノッブを気取る若者にありがちな、虚栄心を満たすものでしたが、いま、そうした「街」を、所用や付合で訪れてみると、我ながら、その地理感覚を頼もしく思うとともに、若者らくし背伸びしていた往時を、好もしくも思います。

二十歳のときに参加していた、詩誌『Oracle』には、詩人田中宏輔さんや、歌人林和清さんなどが寄稿されていて、そうした、往時の先鋭たちのなか、末席を汚しつつも、終刊まで寄稿し続けられたことは、「高級な街で遊ぶ感覚」と同様、いつしか、肉付きの仮面となり、はたまた、「所用や付合」で披歴する、自身の成果ともなっているので、時のあだな所以というものを、こうした、機会に思わざるを得ません。

歌人笹原玉子さんとの付合も、「二十歳のときに参加していた」誌上でのそれが、公私におよび、いまや、リタイヤされた彼女の茶飲み友達くらいにはなっているかも、との自負こそあれ、やはり、才能に対する畏敬の念は、そうした、年月が温めてきた旧交のうちにも、顔を覗かせるものです。

そんな、笹原さんとは、はじめてとなる代官山逍遥も、私にとっては、四半世紀振りのことであり、東横線副都心線と直結し、駅構内も、さぞや変わってしまったのだろうな、とのそれも、杞憂に終わりました。

もともとが、繁華を逃れた住宅街であり、ゆえに、小さな駅舎を、どう拡張・拡大しようというのか? それこそが、愚問であり、その解答は、「代官山アドレス」に連なる、瀟洒なショッピングモールと、これも、同潤会アパート跡地に、ブックセンターが出来たくらいな、変わりのなさでした。
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待ち合わせたのは、遅めのランチ時。

笹原さんが向かうのに任せ、ついて行った蕎麦屋は、定休日でしたが、私にとっては、思い出のある、「サンローゼ代官山」にのちにはいった、「代官山 美味 飲茶酒樓」でランチをとると、カフェは、これも、思い出のある、「HILSIDE CAFE」で、冬日の夕方までを過ごしました。

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「HILSIDE CAFE」がはいっているヒルサイドテラスは、これも、四半世紀前になりましょうか、コシミハルさんのコンサートを聴きに訪れたことがあり、私の代官山イメージは、そこに集約されているといっていいくらい、遠くも近くもある、かの地、なのでした。

また、その周縁を見れば、「マチルドインザギャレット」(現、田園調布で営業)も、このたびが、お初の「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」も、「代官山イメージ」に連なる、私にとっての聖地なのです。(それぞれが修道院モチーフになる雑貨小物や美容小物の取扱店)

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そんなこんなで、「冬日」とはいいがたい、それゆえ、軽装の若者たちであふれた、代官山の喧騒を逃れるように、先週の日曜日は、私にとっての古(いにしえ)の場所を訪ねてみました。

おしまい。