行きと変わらぬ荷物の重さを、地下鉄乗り場への上り下りに痛感。
もちろん、エレベーターはあります。
しかし、直近の地上までは運んでくれません。
国際展示場駅前ロータリーから、新橋駅行きのバスに乗り込んだはいいのですが、地元駅に連絡している地下鉄に乗り、あまつさえ、沿線にある駅を目指すには、五分の道のりを歩かねばならず、「荷物の重さ」はさることながら、手元用コンタクトレンズで利く視界にも、限度というものがあって、ましてや、夜分です。
利かない視界を、白と青のトリコロールシャツが横切ったとき、正確な位置情報を訊ねるべく、声をかけた佐川急便さんから、
「そこです」
と指差され、日比谷通り沿いを、スマホのナビどおりに歩いていた弱視(手元用コンタクトレンズで利く視界の限り)に、光明が差すのを感じました。
さらに、話は、八時間前に戻ります。
勝どき駅からアクセスするべく地上に出るも、乗り場がわかりません。
「ゆりかもめの乗り場はどこですか?」
「ありませんよ」
とは、かけた声からの返答で、赤ちゃんを抱いた女性が、スマホで調べ始めた、そのほどがある親切に、ありがとうございます、と立ち去ろうとしたとき、
「どちらへ行かれますか?」
「東京ビッグサイトです」
「でしたら、そこの大通りを渡ったところにバス停がありますよ」
との案内どおり、東京ビッグサイト行きのバスに乗り込むと、所要15分で到着した場所が、「文フリ東京」初参の、彼地(かのち)です。
さて、「彼地」までの変遷を記せば、
秋葉原(東京都中小企業振興公社秋葉原庁舎 2004〜2008)
↓
大田区(産業プラザPiO 2009〜2011)
↓
となります。
さらに、話は、二十年前に戻ります。
四十年の歴史を持つ、「コミティア」への出店参加(一般参加は高校生の頃 w)を、「文フリ東京」に切り替えたのが、2009年の「産業プラザPiO」からであり、「東京流通センター」を経て、このたびの「東京ビッグサイト」での初参には、それゆえ、感慨深いものがあります。
とはいえ、決められたブースで荷を解き、出店の準備を始める頃には、いつものジャンル、かわらぬメンバーに、ここが「彼地」であり、これから始まる「初参」へのおののきなど、どこ吹く風とばかりな、文フリ風景なのでした。
「きょうも、よろしくお願いします」
と前回隣ブースだった「トモさん」にご挨拶。
「昨日の夢にスミレさんが出てきて」
「ああ、前回は、お釣りを用意してなくて、ほんとうに助かりました」
「いやいや、そのお釣りをね、夢のなかのスミレさんに、もっとねえのかよ! と、冷笑されながら、せびられまして」
と続ける「トモさん」の、私への認知に、なかば、ズッコケつつも、我々が高校生の頃、
「こんな映画に関心持ってる男子ってことある?」
と、当時の自分以外の存在に、それも、この映画を、探究の対象としているそのひとに、つまり、そうしたモラトリアム期間への回帰を、許してくれる友が居るのも「彼地」であり、これまでの実生活に底流し、ときに支えとなってくれていたかもしれない、自らの「探究」に、これも、同じような「関心」から来店され、そうした探究の書を手に取られ、いつしか、ご常連のお客さまとなってくださった、識者の方々の「存在」には、いつも、救われています。
そうしたなか、あるいは、「初参」へのおののきのなかで、開口一番に来店された、いちげんのお客さまとは、相互フォローもなく、一方的にツイートを読みに行っていた、「男色文献収集の猛者」の方で、そのツイートの感想などを述べているうちに、あれよ、といつもどおりのペースで、このたびの「彼地」での売上が、コンスタントの域にある、その定点確認が出来たのは、ひとえに、来店してくださる「お客さま」あってのことと、感謝しかありません。
そして、これも、文フリではお世話になっている、メガネ文庫さんと、ますく堂なまけもの叢書さんが訪ねてくださり、主宰の益岡和朗さんのはじめての単著を買うことが、「彼地」での目的の一つであり、前者、メガネ文庫さんの精力的な活動には、いつも、関心させられるとともに、その内容にいたっては、第一級史料であり、かつ、カバーのデザインが美しく、それを汚さぬようにと、ビニールカバーをして、いつでも読めるようにしている私は、この同好の友たちとの年二回の邂逅を、楽しみにしている者のひとりなのです。
また、ミクシィ時代からの友人、峰あやをさんと、拙著の装幀をしてくださっている、真田幸治さんとが、一緒に訪ねてくださり、この方たちあっての、いまの私! に、胸が熱くなるのを感じました。
さらに、青壮年層のいちげんのお客さまには、購読の有無に関わらず、その「関心」を少ない会話のうちに知れたことが面白く、願わくば、そうした「青壮年層」のお客さが、もっと増えれば良いな! などと、腥(なまぐさ)いことを考えている、このたびの、「文フリ東京」、「東京ビッグサイト」での「初参」についての感想などを、滔々と述べてみました。笑
冒頭、「行きと変わらぬ荷物の重さを、地下鉄乗り場への上り下りに痛感」というのは、「初参」に際し、「コンスタント」以上の商品を準備していったがためであり、地元駅の沿線にある駅で持った、サイゼリヤでの打ち上げのあと、ばっちりメイクをした盲の女性が、杖を使いながら巧みにマンションにはいっていったのには、腰が抜けました。orz
それで何か一本書けそう! 思ったのは、もはや、病といえましょう。🖊💀
おしまい。