「必ず、一つ、忘れ物するんだよね」
と、お手伝いにはいっていただいたKくんに、「文フリジンクス」ともいうべく、私のそれを、縷々、語りつつ、
「ちょっと、キップ買ってくるね」
と、「文学フリマ東京」の会場となった、東京流通センターからの帰途、都合、二回、Kくんの足を止めさせてしまいました。
つまり、パスケースを忘れたというわけです。
前回から、「第二展示場」(第一展示場より拡張)での出店が続き、出店者の入場まで、建物脇に列んで待つのですが、そのことを見込んで、入場時間の15分前に到着するも、入場とともに列が動き出す頃には、蛇行しつつ三列にもなり、過去最多の出店者数とのそれにも、頷けました。
ブース位置は、出入口から壁際を伝った、一番始めにあり、ありていにいって、隅っこ。
テーブルの配置上、ひとの流れから外れることにはなりますが、「隅っこ」というだけあって、そのデッドスペースは、使い放題であり、ものは考えようです。
隣は、お初のサークル、二軒隣は、前回左隣でした、「『1999年の夏休み』研究所」さんで、荷物を置いてご挨拶に行くと、
「スミレさんとの会話をヒントに文章書かせていただきました」
といって、冊子を謹呈いただきましたが、何より、「スミレさん」と呼ばわれることのほうが新鮮で、私を知る文フリ関係者には、そう呼んでもらおうと、思ったものでした。
その最大のチャームポイントともいうべきソックスガーターについて、あれは「タルホ的か?」とおっしゃるのです。今道子さんの写真を示し「体育すわりをすれば二等辺三角形が足の下にすっぽり収まるような少年」こそがタルホ的少年であり、しかしてことさら少女であることを強調するかのごとくフトモモに食い込んだガータベルト(ソックスガーターか)は、少年性を台無しにしてはいないだろうか。『1999年の夏休み』という優れた作品の唯一かつ最大の問題ではないだろうか、とおっしゃるのです。
何の気なしにした会話が、文章になり、冊子になる、その「会話」がネット上のものであれば、質量をともなうこともなく、やがて、星屑になり、消滅するでしょう。
つまり、それが、「文学フリマ」という媒体の面目躍如なのです。
そうした、「質量」をキャリーバッグとリュックサックとに分散した荷を降ろすと、開場時間までの小一時間は、設営であっという間に過ぎていきましたが、その間にも、前回右隣でした「メガネ文庫」さんと、友人の「久留一朗デザイン室」さんが、ご挨拶に訪れ、メガネさんとは互いが持参を物々交換し、クトメさんには展覧会のDMをいただき、それぞれに著名した拙著を差し上げました。
そうした、「著名本」を、事前来意の有無を確かめた上で数冊ご用意し、開場時間の正午から三時くらいまでの間に、お立ち寄りいただいた、すべての方々に無事、手渡すことが出来、かつ物々交換出来ました。
『Pocoapoco』(画像)というのは、「ジェンダーやセクシュアリティに関連したテーマについて」の講義録であり、そうした活動を運営されているその方には、以前、拙誌『薔薇窗』を通販にてお買い上げいただいたことがあり、このたびは、遠路はるばるお越しになったということですが、お買い上げいただいた、通巻26号の記事の後日談ともいうべくお話を伺い、こうした探究心こそが、地場となるべく集結するのも、「文学フリマ」という媒体の面目躍如、なのだな、とあらためて思ったものです。
以下は、友人の「久留一郎デザイン室」ブースで購入したものです。
20代の頃からの友人であり、その頃から一貫したスタイルには、脱帽を通り越して、もはや、脱毛です。
互いの毛がなくなるまで、その付き合いは、続くことでしょう。(都合、三回、絶好・仲直を繰り返している、腐れ縁 w)
それにしても、と前々回より、「ファンタジー」カテゴリから、「ボーイズラブ」カテゴリにて出店するようになり、そうした、ブースで会話した、BL作家志望の女性とのそれが思い出されます。
「艶が欲しいんです」
と、拙著(作品集成)を示して訊ねる女性のそれには応えず、
「私、BLってわからないんです。自分では、耽美を書いてるつもりなんで」
と女性に返すと、
「耽美ですか?」
「BLの前身というか、私が知っているボーイズラブは、こちらの須永朝彦先生とか(ディスプレイ用の文庫を示し)、近く中島梓(真夜中の天使)、遠く森茉莉(恋人たちの森)、あたりですかね」
とポカンとしている女性に、
「ところで、昨今のBL事情は、どうですか?」
と問う私のそれに、女性答えていわく、
「いまのご時世だったら、格差ですかね。恵まれているものとそうでないもののカップリングとか、お金でも、お顔でも。ただ、それは、型に過ぎないですし、私が書きたいのは、そうした男性同士の心理描写なんですよね。あとは、時代、つまり、奥行ですね」
そこで、拙著の何をおススメしたら良いものやら、と。
とはいいじょう、それぞれの特色を伝え、とりわけ、「作品集成 I」所収の「獣園」のダンになったとき、私ってば、あらすじ・おすすめ、するの下手っぴ選手権大会じゃん! となるも、
「お金持ちなら全部買いたいところなんですが」
という女性にお買い上げいただいたのは、「獣園」所収の「作品集成 I」であり、次回「作品集成 II」を買いに来てくださるかの、ドキドキ・ワクワクがあるのも、「文学フリマ」という媒体の面目躍如、なのだな、とつくづく思ったものでした。
また、青年以上の男性たちが、脇目も振らずに、「作品集成 II」を手に取り、買っていかれたのにも、不思議な興味を覚えました。(こはい 笑)
「興味」といえば、通販でのご常連であり、直販でもお買い上げいただいている、男性のお客さまが、毎回ご一緒されている、青年が気になり過ぎる! という不躾な「興味」があります。
それにしても、「隅っこ」で展開された、このたびの「文学フリマ東京」、そのデッドスペースともいえる場所で、短時間ながら何人もの方々と、有意義な時間を持つことが出来ました。
ご来場、お立寄、に感謝です。